流星群の下で
ついにマントの少年は待ちきれなくなって、
「あらゆるものを呼び寄せる黒魔術があります。やってみましょう。」と提案した。中年男は躊躇することなく、
「やろう。」
と答えた。
マントの少年は呪文を唱えた。
「銀河の果てより馳せ参じ、我がもとへ舞い降りんとする星夜の神よ。わが声に呼応せよ。お主の秘めたる力、我が眼前で見せたまえ。“アブソリュート・グラビテイション"!」
再び辺りは静まりかえる。
「うぉぉぉぉ!!」
マントの少年は叫ぶ。
「うぉぉぉぉ!!」
中年男も叫ぶ。
だがいっこうに流星群はやっこない。
「はっはっはっはっは。」
ややどすのきいた笑い声が響く。
「あはははは。」
やや幼さの残る笑い声もあとを追いかけるように響いた。
そして二人は顔を見合わせて、また笑った。
「何もおきないじゃないか。」
「何も起きませんね。」
「帰ろうか。」
「帰りましょう。」
「また明日も来るかい?」
「また明日も来ます。」
明日の約束を取り交わして、二人はそれぞれの自宅の方向へと歩き出した。二人が去ったあとの星空には遥か彼方からやってきたペルセウス座流星群が美しい弧を描き始めていた。

< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

仇打ち

総文字数/5,828

ホラー・オカルト14ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop