僕の許嫁(仮)が怪しすぎる!


「…嘘だ。8月1日、今日で18歳のはず…。」


朱羅は両手を使って数を数え始めた。


「何勘違いしてるか分からないが、僕は間違いなく17歳です。」


「お前、青田藍、に間違いないよな?」


なぜ僕を疑いの目で見る。

疑わしいのは、お前だ!お前のすべてが、もはや怪しい以外の何者でもない!


「ちょっと、待て。」


朱羅は手で僕を制すると、ケータイを取り出し、どこかへ電話をかけ始めた。



「あ、もしもし?御無沙汰しております。赤井の娘ですが…はい、どうも。うちは皆、元気ですよ、お陰様で。…ところで、おたくの藍君ですが、生年は…はっ?…ああ…そうでしたか。分かりました。…いえいえ、何も問題ありません。…あっ、お土産とか気になさらないで下さい!じゃ、失礼致します…水樹おば様。」



は?水樹…?



「ちょっと、待てぃ!…ケータイを貸せ!」


僕は朱羅からケータイを奪い取ると、番号を確認した。



間違いなく、母さんのケータイの番号だった。



そして…。


「あら、藍君。語気が荒いわよ。大丈夫?…今、うちに朱羅ちゃんいるでしょ、仲良くね。」



この、のんびりとした口調、特徴のある声。


確かに、母さんのものだった。



「母さん、誰なの、こいつ?なぜ知らない奴が勝手に僕のうちの中にいるんだ?」


「こいつ、なんてやめなさい。…藍君、よくお聞き。その女の子は、貴方の許嫁です。…なかなか言い出せなくて悪かったけど。」



いや、そういう大事な事はちゃんと言おうよ!


「母さんも小さい頃に会ったきりだからね。電話ではよくお喋りしてたけど。…まあ、とにかく、責任は貴方のおじいちゃんとおばあちゃんにあります。彼らが決めた事だからね。…あら、電車が来たわ。じゃあね!」



プツリ、と電話は切れた。



僕はケータイを閉じ、ゆっくりと、その許嫁とやらの顔を見た。



身長は、小さい。
150㎝くらいかな。もっと低いかも。


痩せ型…、つまり子供っぽい体型というのかな。

顔も子供っぽいよな。




「ごめん、タイプじゃない。」




僕は素直に謝った。



「なっ…!」


朱羅は口を開けたまま、しばし茫然としていた。


それから何を思ったのか、急に真面目な顔になった。



「私の勘違いで、計算が狂ってしまったが、逆に考えれば、あと1年猶予が出来たという事だよな…。」


何をブツブツ言っている。


ひとの話、聞いてたか?


「確かに、急に現れて結婚しろ、と言われても藍も戸惑うだろう。…1年かけて、私という女性がどんなに素晴らしいかを知ってもらうのも悪くはない…。」



ニヤリ、と笑う朱羅。


こいつ、どの辺からその自信がわいて来るんだ?

しかも、ひとの話をやっぱり聞いてないだろ!



「はっきり言わせてもらうが、僕は君と結婚する気はまったく、ない!」


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