僕の許嫁(仮)が怪しすぎる!
「ねぇ。うちの旦那と蒼一朗さんも呼びましょうよ!今夜、うちに二人で来て。家の者たちが眠ったら、こっそりやりましょう?」
茜の提案に、葵はすぐに頷いた。
「倉の中がいいわ。あそこなら、誰も来ない。」
「そうね。紙は私が用意するわ。この本の通りに、かなを書けばいいのね?」
「じゃ、後でね。」
「待ってるから。」
二人は、秘密の相談にドキドキしながら、別れた。
やがて、夜になり。
四人は倉の中で、月明かりを頼りに、紙を取り囲むよう、四方に座り、銅貨の上にそれぞれの人指し指を乗せた。
◇◆◇◆◇◆
「おい、話の途中で悪いが。」
僕は割り箸をパキン、と割る朱羅を見下ろした。
「じいさんたちがやったまじないって…、」
「そう。狐狗狸さん。」
「駄洒落かよ。」
朱羅は気にせず、麺を口に運ぶ。
「いいから、黙って聞け。」
◇◆◇◆◇◆
「こつくりさん、こつくりさん、いらっしゃいましたら、お答え下さい。」
蒼一朗は、内心バカバカしいと思っていた。
しかし、妻の葵は純粋だし、仕方ないから付き合ってやることにした。
ふいに、指を乗せた銅貨がゆっくりと、動き出した。
四人は、目を見合わせた。
「誰か動かしているのか?円治、お前か?」
女たちを喜ばせるために、この男ならやりかねない。
悪い意味でなく、円治は優しいのだ。
「わ、私ではない。」
「そうよ。うちの人じゃありません。こつくり様という、神様が動かしているのよ。」
茜に、にらまれて蒼一朗は黙った。
銅貨は、「はい」でくるりと回り、また始点である鳥居に戻る。
「すごいわ。…葵ちゃん、こつくり様は、どんな事でも教えて下さるって、本に書いてあった。何か質問して。」
「うん。…こつくり様、いつ頃、私たちは子宝を授かる事が出来ますか。」
葵が質問すると、銅貨は、再び動き出した。
こ、と、し、ご、が、つ…
「今年…5月…。蒼一朗さん、聞きました?」
「う、うん。」
蒼一朗は、目を輝かせてはしゃぐ妻に、ただ頷くしかない。
「良かったね、葵ちゃん!…こつくり様、うちは、どうですか?」
次は茜が質問した。
ら、い、ね、ん、せ、い、が、つ、…
「まあ、来年の1月!おめでたいですね!茜ちゃん、良かったねぇ。」
葵は自分の事のように喜んだ。
「なあ…もう、いいだろう?そろそろ、やめないか?」
突然、円治が口をはさんだ。
見ると、顔が蒼白い。
月明かりのせいではなく、具合が悪そうだ。