僕の許嫁(仮)が怪しすぎる!
◇◆◇◆◇◆
「で、結局はどうなったんだよ?」
僕は満足そうにお腹をさする朱羅に、尋ねた。
「こっくりさんがなかなか帰らないので、彼らはその夜、全員で指を離し、解散した。うちのじいさん…円治が意識を失ってしまったからね。」
「まさか、こっくりさんの呪いか?」
僕はごくりとつばを飲み込んだ。
「いや、単に昼間食べた牡蠣にあたっただけだ。じいさんはそれ以来、貝類が食べられない。」
何だよ、ただの食中毒か。
「問題は、その後。…その夜から、青田家と赤井家にはおかしな事が起こり始めたんだ。こっくりさんの呪いの始まりだな。」
呪いなんて本当にあるのかよ?
第一、僕はじいさんたちからそんな話は1度も聞いた事がないぞ。
「…私が聞いた話では、赤井家を訪れた客人は皆、必ずどこかにケガをして帰るらしい…ポルターガイストが日常的に起きた。やがて、誰もうちに来なくなってしまった。」
マジかよ。
「ちなみに青田家では、農作物を植えても、すべて枯れるようになり、家の存続さえ危ぶまれた。…最初は本気にしていなかった蒼一朗氏も、さすがにこっくりさんの呪いを信じざるを得なくなった。」
しかも、と朱羅は続けた。
「予言通り、5月と1月にそれぞれの子供が産まれたんだ。」
「確かに、父さんは5月生まれだな。」
「うちの父も1月生まれだ。…続けるぞ。二組の夫婦は、話し合って、村の神社にいき、神主にすべてを打ち明け、相談することにした。」
◇◆◇◆◇◆
「神主様、私たちはどうすれば良いのでしょう?」
蒼一朗は、神主にすがった。
「こつくり様、とあなた方が呼ぶのは…狐狗狸…つまり、動物霊ですな。動物霊と言っても、かなり強力な力を持っております。取り合えず、私が呼び出し、何とかおさめましょう。」
「宜しくお願いします!」
四人は頭をさげた。
茜と葵の腕には、それぞれの赤子が抱かれていた。
「うむ。…これでいい。…さて、こっくりさん。居られましたら、出てきてくだされ。」
神主は例の紙を使い、一人でこっくりさんを始めた。
指がするすると動き出し、「はい」を示す。
「そろそろ、この者たちを許してはいただけませんか?」
…「いいえ」
「では、条件を言って下さい。どうすれば許してくださいますか?」
少し、間があり、やがて指が動き出した。
四人は、その文字を目で追う。
あ、か、と、あ、お、の、こ、ど、も、よ、こ、せ、…。
「イヤッ!」
「絶対に嫌です!」
茜と葵は、我が子を守るように抱き締めた。
「待て。…また動き出した。」
あ、か、と、あ、お、の、ち、を、ひ、く、こ、ど、も、だ、…。
「え…?」
「意味が分かりません。」
蒼一朗と円治は、顔を見合わせ、さらに神主に説明を求めた。