軍平記〜その男、村政〜
復讐の青葉編
序
凄まじい砂煙のなか、一人の男が佇む。
片腕で兵士を貫き、拳で兜を叩き割る。
刀を奪い声を発する事もなく切り伏せる。
槍を投げ串刺しにした兵士を放り投げる。
ほとんどの兵士を一人で片付ける男。
「さあ、居ないか!我こそはと言う強者は!!」
殆どの野武士達は倒された。
街道を荒らすこの野武士達に困った街道の住民は用心棒を雇った。
名も明かさないこの用心棒は、鮮烈な強さだった。
松代国へ向かう途中立ち寄った宿場で、用心棒を頼まれたのだ。
宿場の人間は誰もこの男が、これ程腕がたつとは思って居なかった。
この用心棒の男は、何も要求せず、立ち去っていった。
宿場は活気に満ちている。
野武士の集団は半年前に全滅した。
その後、その男を見たものは居ない。
ただ、宿場の人達は男を忘れる事は無かった。
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