軍平記〜その男、村政〜
暗躍と破壊。
敵は眼下に陣を広げる赤城国の先鋒隊。
山の上から見下ろす松代軍。
ここに村政は配属された。
ここ数日、松代軍内で指揮官達の謎の死が相次いでいる。
事実松代軍の士気は低い。
地の利を生かした松代軍は、今は優勢である。
しかし、士気の低い松代軍は攻めあぐねいていた。
村政は指揮官の寝首を欠いた。
伊達家筆頭御庭番の頭の息子である村政にとって、味方の指揮官の寝首を取る事など、訳もない。
不穏な空気が松代軍に流れている。疑心暗鬼に陥っていた。
ある者は赤城国の間者が入り込んでいると噂し、青葉国の裏切りだと言う者もいた。
そんななか村政は、粛々と暗殺を行っていく。
「誰だ!」
足軽部隊の指揮官が叫ぶ。
「俺ですよ、村政です。」
「なんだ貴様か。何の用だこんな時間に。」
「良い酒が在りますのでどうですか一杯?」
にこやかに笑う村政。
「こんな時に、帰れ帰れ!」
指揮官は取り合おうともしない。
「まあまあ、こんな時こそうまい酒を飲んで、士気を上げましょうよ。」
村政は幕舎に入る。
「入ってくるな馬鹿者!」
「まあまあ・・・。」
指揮官の刀に手を掛け、抜く村政。
刀を一気に心臓へ突き刺す。
「まあまあまあ・・・。」
指揮官の口を酒で塞ぎ、鎧ごと貫いた。
「うぬぐぐ・・・。」
指揮官は倒れた。
「うまい酒でしょう?」
村政は笑う。
幕舎を出る村政。
幕舎の周りには他にも、数名の足軽兵の死体が転がっていた。
「今夜中に足軽部隊は壊滅しておくか。」
村政は闇へ歩き出した。