軍平記〜その男、村政〜
村政が本陣に到着したのは夜も大分更けた頃だった。
「申し上げます。高山銀次郎さま、途中の森にて青葉国の刺客の襲撃に遇い、絶命なさいました。」
村政は副官の幕舎の前で告げる。
「な、なんだと!青葉国が裏切っただと!しかも、高山殿が死んだのか!」
副官は慌てて幕舎から飛び出してきた。
村政は膝まづいたまま頭を下げる。
「はい。お伝えするため戦線を離脱して参りました。」
「うぬぬ!よもやこんな事になろうとは!」
「して、他の部隊達は!」
「はは。第三足軽部隊まで壊滅、本陣軍も壊滅です。」
「すると、我が本陣部隊と、青葉国と合流する、第四第五足軽部隊の計一万五千のみか。」
「うぬっ。なんたる事だ。たった五日でこれ程の被害が出るとは!」
村政は黙っている。
「青葉国の裏切りか否か。明日早朝より斥候を放ち、確認しなければ。」
副官はそう言い残し、村政に下がれと命じ、幕舎に入った。
村政は立ち上がり、再び闇へ消えた。