軍平記〜その男、村政〜
早朝から松代軍本陣は、斥候を放ち青葉国の動向を探らせ始めた。
無論、青葉国が裏切った訳ではない。村政の暗躍の為、松代国に動揺が走っていた。
青葉国が赤城国の国境に進軍してきたのは、その日の早朝である。
朝霧に紛れ、西洋鎧の重機兵と足軽部隊。
連発式銃武装、弓矢隊、の計四万の兵士が進軍してきた。
青葉国軍総司令、原田回悠(はらだかいゆう)の元、国境に陣を敷いた。
迎え撃つは赤城国軍部総帥、上杉一徹(うえすぎいってつ)率いる騎馬一万。
戦いは、朝霧が晴れると同時に開始された。
凄まじい轟音が赤城国の軍に降り注ぐ。
連発式銃の一斉砲火である。
間髪を入れずに弓矢が飛ぶ。
まるで大雨のように。
上杉一徹は青葉国軍に近付く事もできず、陣を後退せざる負えない。
一歩一歩境を侵略し始める、青葉国軍。
「進軍!!」
原田が叫ぶ。
重機兵騎馬隊が砂子煙を巻き上げ突進する。
赤城軍長槍足軽部隊が隊列を組み直し、迎え撃つ。
鎧を纏った騎馬隊は槍をも恐れず突き進む。
両国激突する。
突き進む青葉国軍の勢いは止まらない。
後方から上がってくる青い鎧の騎馬隊、原田回悠が指揮する青葉国「青龍騎馬隊」。
全員が一騎討ち要員だが、他の部隊の比ではない統率がとれた部隊である。
「目標、赤城軍総帥上杉一徹!その首もらい受ける!」
原田が怒号を発する。
重機兵騎馬隊により、軍の深くまで進行を許した赤城軍は、総崩れである。
上杉一徹は、起死回生の一撃に賭けるべく、青龍騎馬隊の前へと進む。
「我こそは赤城国軍部総帥、上杉一徹なり!青葉国の餓狼の輩よ、我と一騎討ちを所望!」
青龍騎馬隊の一人が上杉の前に現れる。
しかし、一振りの槍で片付ける上杉。
「雑魚に用はない!出てこい餓狼の輩よ!!」
「私が青葉国軍総司令、原田回悠だ。」
静に答える。
「貴様が大将か、我が名は上杉一徹。一騎討ちを所望!」
「よかろう。槍の錆にしてくれる。」
原田は言う。
お互いの槍がぶつかり合う。
空気が震える。
何度も打ち合う槍が凄まじい音を立てる。
原田回悠は必殺の一撃を繰り出した。
上杉一徹の馬が余りの衝撃で崩れ倒れる。
「くっ、しまった!」
二振りめの一撃を上杉に食らわせた。
上杉の頭蓋を切り砕く。
「うぬぬがぁっ!!」
伏せ倒れる上杉一徹。
そのまま、絶命した。
「赤城軍よ!大将は死んだ!まだ戦うのであれば、全員を皆殺しにするのみ!」
怒鳴る原田。
赤城軍はもはや、総崩れ。
刃向かう事など出来ない。
赤城軍はひとまず近くの砦まで引く事となった。
青葉国軍は戦場に陣を構え、国境を越えた。
赤城国への侵略は、青葉国の勝利で幕を開けた。
国境近隣の集落や、畑や水場は青葉国に支配された。
実に、赤城国軍は二千にまで数を減らした。
手痛い敗北になった。