軍平記〜その男、村政〜
青葉国に与し、原田回悠の軍に潜り込んだ村政。
名を太兵衛と偽り、赤城国と戦う事になった。
松代国に向かった使者は疑心暗鬼に陥った松代軍に殺されていた。
その事実は青葉国軍には伝わっていない。
それ所か、青葉国に対して侵攻を開始すべく準備を始めていた。
その動きを見てとった赤城国軍は、国境警備に若干の兵を残し、青葉国国境に進行を開始。
状況を把握していない青葉国軍は、この時同盟国の松代軍と戦う事になろうとは、思っても居ない。
青葉軍は赤城軍の騎馬隊を全滅すべく、砦に兵を進め始めた。
火気連発式銃の威力は凄まじく、赤城軍騎馬隊はなす統べなく砦に籠るより他はなく、援軍の到着を待つ間に、無数の死傷者を出していた。
砦の陥落は時間の問題だった。
青葉国に激震が走ったのは、砦陥落の間際である。
「松代軍が後方より襲撃!弓隊、火気部隊が甚大な被害を受けております。」
「報告!松代軍が、我が本陣を壊滅!総崩れです!」
「な、何だと!!」
原田は叫んだ。
重機兵騎馬隊、重機兵足軽部隊の主力は砦に集中していた。
本陣との導線は完全に遮断された。
更に、多数の飛び道具を失ってしまった。
本陣の副官は切られた。
松代軍はそのまま赤城軍の砦に迫る。
「うぬ!松代め裏切りおったな!」
「者共、松代軍を決して許すな!皆殺しにせよ!」
原田は指令を出す。
青葉国二万と松代軍一万五千がぶつかり合う。
敵味方が入り乱れて大乱戦に陥った。
怒号と絶叫が響き渡る。
馬の蹄が乱れ打つ、武器と武器がぶつかる。
原田は先陣で鬼神の如き勢いで槍を奮う。
その度兵士が吹き飛ぶ。
凄まじい戦いである。
どちらかが全滅するまでの戦いである。
「誰かおらぬか!」
原田が叫ぶ。
「ははっ!ここに!」
「おお、太兵衛か!至急青葉国に立ち、援軍を要請せよ!松代を挟み撃ちにしてくれる!」
「御意!では失礼いたします!」
太兵衛事、村政は、原田のそばに隠れ、様子をうかがっていた。
原田から遠ざかる村政に松代の兵が襲い掛かる。
「おっと、危ない。気を付けろ。」と、難なく交わし森へ身を隠す。
無論、青葉国に向かう気など在りはしない。
木に隠れ、赤城軍が到着するのを待つ。
青葉軍、松代軍の死力を尽くす戦いは、未だ終わらない。
陣を失った青葉国軍は、松代国軍を倒す以外に道はない。
松代国軍も盟約を違えた以上、青葉国軍を倒すのみだ。
お互いの思惑は完全に潰えたのだった。
ブオォ〜。
法螺貝が鳴り響く。
無数の矢が青葉、松代両国に放たれる。
松代軍を追って来た、赤城軍が戦場に到着した。
「さて、間も無く仕上げだ。」
村政は未だ木に隠れ、様子をうかがっている。