軍平記〜その男、村政〜
重機兵騎馬隊は守りに強い。直接攻撃において無敵である。
西洋鎧は繋ぎ目が重なり、槍や刀を通しにくい。
しかし、重さと鈍さが邪魔をする。
ぶつかり合う場合の破壊力は相当なものである。
無論、演習や訓練は恐ろしい程行っている。
だが、人である以上物理的に長時間の戦いや、狭い場所では不利となる。
退路を断たれた青葉国軍は、鎧を脱ぎだし、身軽になり、松代国軍と戦い始めた。
そこに赤城軍が放った矢が襲い掛かる。
まさか、である。
重機兵は、虚を突かれバタバタと倒されていく。
応戦することも出来ない青葉国と松代国軍。
波のように何度も放たれる矢。
兵がバタバタと倒されていく。
一斉射撃の矢が尽きた赤城軍。
側面より二国目掛けて突撃を開始した。
軍は側面攻撃に弱い。
見る見るうちに両国は押されていく。
三国入り乱れての大乱戦である。
砂ぼこりが舞う中、怒号と喧騒が響き渡る。
砦に立て籠っていた赤城軍も参戦してくる。
油断していた青葉軍に襲い掛かる。
背後と側面、前方を抑えられた青葉軍は徐々に兵を減らしていく。
松代軍も兵が倒されていく。
三国はついに消耗戦に突入していく。
赤城軍の砦から出撃した部隊は全滅。
松代軍は約六千にまで減少。
青葉軍に至っては、三万から四千にまで減った。
追撃してきた赤城軍は一万。
屍の山が築かれていく。
地は赤く染まり、死体が詰まり川が氾濫する。
武器が地面に刺さり、馬たちも横たわる。
尚も、戦いは止まない。
原田が鼓舞する。
「もう少しで青葉の援軍が来るぞ!何としても持ち堪えろ!!」
おおっ!!
青葉軍の兵達は叫んだ。
巻き返すべく士気を上げる。
松代軍は赤城軍に翻弄されている。
もはや赤城軍対松代軍の戦いだ。
ぶつかり合う。
全力で二国はぶつかり合う。
間に挟まれた青葉軍も、背水の陣で挑む。
戦いは夜戦へ突入していく。
ドゴーン!!
青葉軍の後方より何かが消し飛んだ。
一閃が原田めがけ突き進む。
槍である。
グサッ!
原田の心臓を突き刺した。
「ば、バカな!夕闇だぞ・・・。」
崩れ落ちる原田。
「大将がやられたぞ!!」
青葉国軍中に知らされる。
「な、なんたること!」
青葉軍全員が耳を疑う。
闇から何かが狙っている。
ウガアアア!!
絶叫と共に、黒い塊が突き進んで来る。
あっという間にその場の兵士たちが吹き飛ぶ。
二、三十が絶命。
そこに現れたのは、村政だった。
その姿は、ただただ獲物を狩る怪物である。
まるで戦う事を嬉しそうに楽しむ、子供のようである。
その姿を見た青葉軍は言葉を失う。
そして、絶望が拡がっていく。
ついに村政が、今までの溜め込んだ思いをさらけ出す時が訪れた。
一軍を平らげる、軍平としてのタガが外れる時が来た。