軍平記〜その男、村政〜
青葉国西の果て、山中深くに修験の山「羽黒」がある。
北の宮朝廷があった頃、反乱を起こした勢力があった。
将門マサムネ(しょうもんまさむね)と言う将軍である。
羽黒で反乱軍を挙兵し、五重塔を建立し、拠点とした。
当時反乱軍の中心として集められたのが、羽黒陰陽衆と呼ばれる妖術や魔道を修めた陰陽師達であった。
北の宮朝廷を大いに苦しめた反乱軍に対し、青葉領主軍部総無事を勤めていた「伊達夏円(だてかえん)」に鎮圧を要請した。
伊達夏円は彼岸花衆を従え、将門マサムネ達と激しい戦いを繰り広げた。
劣勢になった反乱軍は次第に羽黒まで撤退を余儀無くされた。
伊達夏円軍は羽黒に総攻撃を掛ける。
反乱軍は五重塔に立て籠るも、ついに陥落した。
反乱を起こした将門マサムネは斬首になった。
北の宮朝廷に首が送られる途中、首は突如空へ飛び上がり、羽黒へ飛び立った。
それを見た、さすがの伊達軍もその執念に驚嘆した。
朝廷にはマサムネの髪の毛のみ献上し、羽黒一帯を禁忌の地として封印する事にした。
そして現在に至っている。
生首が羽黒の五重塔に飛んで来た折りに、陰陽衆の生き残りが呪術を掛けた。
いつかマサムネを復活させるまで、呪いによって力を蓄える。
沢山の人間の精気を与え、呪いの儀式を羽黒陰陽衆は代々脈々と続けていた。
霊力は満ち、大願は成就されつつあった。
「ぐ、ぐはぁっ!」
「な、なんたる事だ!」
「や、やめてくれ!!」
極衆は次々と肉体が消滅する。
全員が霊体マサムネに吸収される。
羽黒陰陽衆は尚も呪詛を続ける。
マサムネのよりしろである巨大な弥勒菩薩の像が黒々と霊気で満ちてくる。
バキバキ。
音を発てて弥勒菩薩の顔面が割れる。
中から生首が落ちてくる。
将門マサムネの生首が浮き上がり眼を見開き、口を開ける。
ウガアァァ〜!!
マサムネの生首から不気味な声のようなものを出す。
羽黒陰陽衆の一人が叫ぶ!
「マサムネ様!長きにわたり積み重ねられました怨念を、今日、お晴らし下さい!」
「現世に於けるあなた様の世が、今蘇るのです!」
「我等羽黒の衆の命をお吸い上げになり、完全な復活を遂げて下さい!!」
羽黒陰陽衆は一斉に立ち上がり、マサムネの生首に向かい、手を挙げる。
一人一人が蒸発するように消えていく。
マサムネの体が構築されていく。
黒い炎が全身を纏い、筋骨隆々の悪鬼が姿を現す。
ウガアァァっ!!!
その叫びは羽黒山中に雷鳴の如く響き渡った。