軍平記〜その男、村政〜
「おい!そこ!列を乱すな!」
松代国の足軽頭が怒鳴る。
松代国は島国の真ん中にある。
島国は大きく分けて七つの大国で成り立っている。
北から、大蝦夷国。
青葉国、赤城国、松代国、都、出雲国、火野国。
この七国を総称で七本と呼ぶ。
未だに発見されていない島もあるようだが、七本の国では文化や産業、商業、農業の営みが成されている。
そして七の国同士統一に向けて血で血を洗う戦いが繰り広げられていた。
松代国は隣国の赤城国への侵攻を開始しようとしていた。
それに呼応する形で青葉国も侵攻を開始する。
二国で国境を隣接する赤城国を壊滅せんと画策したのである。
松代国は急遽兵隊を集め始めた。
足軽部隊の編成が進められていた。
そこに村政の姿があった。
第三足軽部隊に編入された村政は、しばらくの訓練の後に前線へ投入される。
ようやく浪人から兵隊に成ることが出来たわけだ。
松代国の兵隊になれば、青葉国の刺客も無闇に村政を狙えなくなる。
刺客に怯えている訳ではないが、総司との作戦上今はなるべく青葉国との接触は避けたかった。
それは総司も理解している。
襲われでもしない限り、総司側からは刺客にも手は出さない。
まずは村政が、作戦の性質上、松代国の内部に潜入する事が必要だ。
そもそも、なぜこんな回りくどい事をやっているのか。
そこにはある事情があった。