Sweet tears
prologue*
「ふぁ…ねむ」
あくびを1つ零してぐっと体を伸ばす。
……──家から歩いて徒歩5分程度。
一見、至って変わった風は無いし
ぱっと見ても綺麗な学校だと思う。
それが私の学校。
…けどこの学校、1つだけ普通じゃないところがある。
「あ、翔ー。おはよ」
「ん、あぁ。おはよ、柚子」
それは、……
「…今日も来たんじゃない?」
「…はぁ。言わないでよ」
「あは、ごめんごめん」
………そう、それは…
私の、天敵…。
─「きゃー!甘くーん!」
─「花牧くん!」
─「花牧先輩ーっ!」
大量の女子の群れに、
「…みんな、おはよーっ」
最っ高に甘ったるい笑顔を振りまく
アイツこそ、
私の天敵で、この普通の学校の(多分)唯一の混沌の原因。
──"花牧 甘"(はなまき かん) …だ。