Sweet tears
one tears*
one tears 1/2*
「…あっ!やっほー!翔ちゃん
おはよっ…」
甘のおはようの4文字を遮り、
甘がこちらに近づくのを拒絶する。
「こっちに来ないで。
アンタの甘ったるい香り、こっちにまで香るでしょ」
「えぇ、甘ったるい香りって…
酷いなぁ翔ちゃん
…ってゆーか、そんなに香りする〜…?」
困ったように眉を八の字に曲げる甘。
「…アンタ、鼻おかしいんじゃないの?
毎日毎日チョコレートみたいな香りさせて…
何食べたらそうなるワケ?」
ジッと睨んでやった。
「ん〜…食べ物関係あるかなぁ?」
「言葉のあやでしょうが。
これだからアンタは…」
「そんなに怒らないでよ。
お肌に悪いよ?」
「アンタが私に近付かなければ
怒ることも無いけどね」
甘が一歩、こちらに近づけば
当たり前のように一歩、甘から遠ざかる私。
毎日のやり取り。
「いつもいつも飽きないよね。
花牧も、翔も」
──"香崎 柚子"(かざき ゆず)。
私、──"高松 翔"(たかまつ しょう)の親友です。
「何言ってんの、飽き飽きだよ。
…っておい、こっちに来ないでってば」
「もう、良いじゃんっ。
翔ちゃんったらケチだなぁ」
「良くないから言ってるんでしょ」
ぷくりと頬を膨らませて、じぃっとこちらを見てくる。
私みたいな女じゃなければ、きっとイチコロなんだろう。
…が、
私は何にも感じない。
「…柚子、教室行こう。予鈴なっちゃう」
「はいはーい」
「ちょっ待っ…
あぁっ。待ってよ、僕も行くっ」
早めに歩を進める私らに追いつこうと、
パタパタと軽い駆け足で私らに向かう甘。
…徐々に近づいて来てる。
アイツの甘ったるい香りが香ってきた。
……あぁもう、鬱陶しい。