*片想い*
門をくぐると、その桃色の歓声が一点に集中しているのがわかる。
「あれよ、あれ。
あれがさっき言ってた2人組のやつら。」
マコトは、口を動かしながら私にわかるように指を指し、説明する。
「髪が黒い方が、一ノ瀬 冬也。
金髪の方が、山田……なんだったっけ? 」
山田…さんに、マコトは頭を悩ませる。
「《和幸》、《和太郎》、いやむしろ、《太郎》……。」
ブツブツと聞こえる小さな声は気にしなかった。
それよりも、私が気になったのは、《一ノ瀬 冬也》くんの方。
遠巻きに見る一ノ瀬くんは、私の心を疼かせる。
「私……、あの人のコト見たコトあるかも…!」
頭を回転させて、なんとか思い出そうとする。
たしか、あれは………、、
淡い夏の、夏祭りの日。
私の片思いが始まった日。
ーーそうだ、思い出した。
彼は、あの時おんぶしてくれた、
私の想い人だ…。
奇跡だろうか、
運命だろうか、
今は気にならなかった。
だって、彼の顔を見ただけで、
私の鼓動がうるさくて、
なんにも聞こえないから。