ホップ・ステップ・飛び膝蹴り
「ほら」
「あー、どうも」
「ん」
大人しく差し入れのアクエリを受け取る。
ポカリよりアクエリ派だからちょっと嬉しいな。
少し頬を緩めれば、隣に座った佐野。
あまり話さないこいつとふたりとか、気まずいかもしれね。
「山内」
「なに」
「お疲れ」
「……逆じゃね?
佐野の方が疲れてんじゃねぇの。
試合出てたんだし」
「それはそうだけど」
あたしはひたすら雑用だし。
あんたらと違ってずっと走り回ってたわけじゃねぇもん。
「でも、山内も疲れただろ」
「まぁ……」
一応、と頷けば礼を口にされた。
なんだなんだ。
なに言ってんだこいつ。
「マネージャーのお前がいてくれて助かってんだよ」
だからありがとう、なんて。
そんなの、……ずるいよなぁ。
だってそんなん、嬉しいって思う。
いいな、って思う。
────そこらにいるオンナノコみたいに素直に好きだな、って思う。
ばかみたいな単純な理由。
だけど、あの時のあたしが欲しかった言葉をくれたから。
簡単に恋に落ちたんだ。
顔をそっと背ける。
……あっつ。
「……そりゃよかった」
「うん。
だからもうちょっと部活に馴染めばか」