ホップ・ステップ・飛び膝蹴り
◇
「李穂(りほ)、新入生部活説明会のことなんだけど……」
「待て、大成(たいせい)。
ドリンク作ったらすぐ行く」
「じゃあ、あと10秒な」
「ふざけんな」
仕事を済ませて、体育館の端を素早く通り抜けた。
3年目ともなれば、これくらいの仕事は手慣れたもんだからな。
柔らかな、春。
新入部員を増やしたい、あたしたちバスケ部。
大成はキャプテン、あたしはマネージャー。
あたしたちはそれなりな日々を過ごしていた。
「遅い」
「うるせ」
そう、それなりに揉めながら。
「グーかチョキかパーか、好きなの選べ」
「じゃんけん?」
「腹パンか目潰しかビンタだ」
「こわ」
バチバチ、と火花が散る。
周りがまたやってる……と呆れた瞳をしていることに気づいていても、これは変えられない。
────好きだから、素直になれない。