ホップ・ステップ・飛び膝蹴り
とりあえず、部室に置きっぱなしの笛を取りに行かねぇと。
部室棟の方へ駆け足。
ポニーテールを揺らしながら着いた部室からは、
「真剣に答えて下さいよ!」
「ちょ、うるさい」
尚と、大成の声。
「……っ」
開けようとしていた扉。
思わず手をとめた。
「おれは李穂先輩のことが好きっす」
「知ってる」
「奪っても、いいすか?」
奪うとか、そんなんじゃねぇよ。
あたしたち、……恋人なんかじゃねぇんだから。
「大成先輩はどう思ってるか、言って下さいよ!」
尚が叫ぶ。
ビリビリと扉越しでも伝わるその想い。
やだ。
やだ、やめろよ。
あたしは聞きたくない……!
身を翻そうとした勢いでビブスやバインダーの入ったかごが、ガンッと大きな音をたてる。
中の会話がぴたりとやんで、ガチャリとドアノブが回って。
「……」
「……」
「……」
気まずすぎて、吐きそうだ。