ホップ・ステップ・飛び膝蹴り
逃げるが勝ち、という言葉が頭をよぎる。
なにに勝てるか知らねぇけど、むしろ負けな気がするけど。
とりあえず、と後ずさる。
「尚」
「なんすか」
「お前、俺が李穂をどう思ってるかって訊いたよな」
「はい」
答えてやる、との言葉を合図にあたしは駆け出した。
なのに、「李穂────!」と叫ぶ大成の声があっという間に追いつく。
転びそうになりながらも足を進めていたのに。
「好きだああああああっ!」
「……っ」
なんなんだよお前。
そんな声、出たんだな。
大きくて、あたしの胸にまで届くような。
切なくて、涙の出るような。
足をとめて、振り返る。
泣きそうになりながら、大成のところまで走って、飛んで。
────飛び膝蹴りが決まった。