ホップ・ステップ・飛び膝蹴り
「なんで大成先輩は、李穂先輩に好きって言ってなかったんすか!」
2年間もあったくせに! と尚が口にした言葉に心臓が跳ねる。
「言えなかったんだ」
……あたしも。
あたしも大成と一緒だ。
大成が尚の手からボールを奪おうとするも、掌に吸いつくようにドリブルされてできない。
「おれの方が李穂先輩を好きだと思います」
大成の一瞬の隙をついて、尚が大成を抜く。
────1点。
「……わかってる」
「え?」
「俺はもっと早くに動くべきだった」
うつむきがちだった視線が上がる。
強く、鋭い瞳。
「なのに、遅くても。
それでも、あいつが誰かと付き合うなんて考えらんねぇんだ」
伸ばした腕が尚の手の中のボールに触れる。
ディフェンスとオフェンスが入れ替わった。
大成が入れた1点で、ふたりともがリーチになった。
「李穂だけは、譲れない」
────次の1点で決まる。
なんだよもう。
ふたりして、あたしみたいな女なんかを好きになってばかだろ。
くそ……っ。
むかつくくらい、ふたりともかっこいい。