ホップ・ステップ・飛び膝蹴り
オンナノコと素直
体育館裏の隅。
木が影になって、周りから少し見えにくいスペースに隠れるようにして膝に手をつく大成。
なにを言ったらいいかなんて、わかんねぇ。
だけど、訊きたいことがひとつある。
「なぁ、あたしのこと好きって本当?」
大成が顔を上げて、体操服で汗をぬぐう。
「アクエリ」
「は?」
「俺たちが初めてまともに話した練習試合の日。
アクエリを頬に当ててお前、笑ったんだ」
覚えてるか? と訊かれるけど……。
やばい、覚えてない。
なにそれ、そんなことしたっけな。
受け取ったことは記憶にしっかり残ってるのに。
「その時のお前が女に見えた」
「おい待てこら」
おかしい。
普通におかしい。
確かにあの頃は全くと言っていいほど笑ったことなんてなかった。
今でも女らしさなんて欠片もないけど、でも、
「あたしはずっと女だ」
「神のいたずらでな」
「その目潰すぞ」
本当こいつ、腹立つ。
やっぱさっきの言葉はうそだったんじゃねぇの。