蟲狩り少女
☆☆☆

そして1時間ほど部屋で休憩したあと、あたしとお母さんは歩いて海へ向かっていた。


潮風が吹き抜けて心地いい。


「やっぱり、海のそばの風は少しべたつくね」


あたしは自分の腕を触って呟く。


「塩だものね。でも気持ちいいじゃない」


「うん。なんだかすごく新鮮」


海なんて何年も来ていなかったから、海を見ているだけでワクワクしてくる。


「あ、ほらあそこよ」


浜辺まで出て来てすぐお母さんが真新しい海の家を指差した。


あれが夕花ちゃんの家が経営している海の家か……。


ログハウスのように木を組み合わせてできている、可愛いお店。


その木は真っ白に塗られていて、看板の赤い文字を際立たせている。


扉はなくオープンになっている入り口から顔をのぞかせる。


「こんにちは」


あたしがそう声をかけると、お店の手伝いをしていた夕花ちゃんがすぐに振り向いてくれた。


「里音ちゃん!!」


夕花ちゃんがよく日焼けした顔で笑顔になる。


「夕花ちゃん、久しぶり!」


「久しぶり! 相変わらず小さくて可愛いね!」
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