蟲狩り少女
光磨はそんな事気にもとめていない様子で微笑んだ。


その笑顔にドキッとしてしまうあたし。


あたしは自分の胸のドキドキを悟られないようにふるまう事で精いっぱいだった。


「ありがとう」


光磨は涼しい顔をしてそう言い、スプレーを自分のカバンに収めた。


あたしは自分でも気が付かないうちに奥歯を噛みしめていた。


光磨はあたしと兄妹でも平気なんだろうか。


そんな気持ちが湧いてくる。


モヤモヤした気分のまま自分の席に座った。


その瞬間。


ポトリ……。


蟲が。


秋の蟲が。


あたしの体から一匹落ちてきた。
< 160 / 289 >

この作品をシェア

pagetop