蟲狩り少女
もう心を蟲に持っていかれてしまっているかもしれない。


そうなれば体を食べられるのは時間の問題だ。


背中にタラリと汗が流れるのを感じる。


心臓はドクドクと脈打ち、まるで自分以外の生物になってしまったような感覚だ。


「おい容子。呼んでいだろ?」


牧悟が朝口容子の耳元でそう言う。


すると朝口容子が手を止め、視線を牧悟へ向けたのだ。


その仕草にあたしはホッとした。


大丈夫だ。


まだ心が全部浸食されたワケではなさそうだ。


大切な人の声が聞こえている。


「俺たち朝口を保健室に連れて行く」


光磨はそう言い、朝口容子を席から立たせた。


「あ……あぁ、たのむ」
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