蟲狩り少女
聞きたいけれど聞くのが怖くて、しばらくの間廊下に沈黙が下りた。


先に口を開いたのはお母さんだった。


「お父さんがお母さんと結婚する前、違う人と付き合っていた事はお母さん知っていたのよ。クラスの蟲狩り師さんは、きっとその時できていた子供なのね」


静かな声でお母さんは言った。


光磨が言っていたことと、全く同じことを言った。


途端に目の前が歪む。


ジワリと浮いて来た涙。


さっきまで散々泣いていたくせに、またあふれ出してきた。


色々な感情があふれ出す。


お母さんは今どんな気持ちであたしを抱きしめているんだろう。


お父さんの血を引いた子供が2人。


ぼんやりと見えていた輪郭が、もっとハッキリ鮮明になる。
< 209 / 289 >

この作品をシェア

pagetop