蟲狩り少女
今まで男性にそんな事を言われたことがないあたしはとまどってしまう。


光磨の顔をまっすぐ見る事ができず、視線を泳がせる。


「そう。大切なたった1人の妹だからな」


あ……。


さっきまで感じていたトキメキが一瞬にして消えていくのがわかった。


ロウソクの炎に水をかけられた気分だ。


「……ありがとう」


あたしは今までにないくらいそっけない返事をして、鞄から一時限目の教科書を取り出した。


もう会話をする気はないという意思を伝えるため、教科書を開いて視線を落とす。


光磨はそんなあたしの意思をくみ取り、体を前へ向けた。


チラリと視線を上げると光磨の背中が見える。


いつもそうだ。


あたしは光磨の背中ばかりを見ている。


追いつきたくても追いつけなくて、隣に並びたくても並べなくて。
< 219 / 289 >

この作品をシェア

pagetop