蟲狩り少女
蟲たちがいる。


今まで見たことのないような、大群が。


その、蟲たちはあたしの家を取り囲んでいるのだ。


いつもならこの位置からでも見えるハズの玄関が、蟲の大群によって塞がれている。


雪の結晶をした蟲たちは徐々に増えているのが目に見えて理解できた。


外から集まってきているのではない。


家の内側から湧いてきて、中にとどまれなかった蟲たちが外へあふれ出てきているのだ。


「なにこれ……なによこれ!」


あたしは半狂乱状態で叫び声をあげ、自分の家だった建物に近づいた。


「危ない!」


光磨があたしの後を追い、あたしの肩を強く掴んで動きを静止させた。


目の前で見上げるとその光景は異様なまでだった。


蟲が人間を覆い尽くす場面はいくらでも見たことがある。


だけど、家まで完全に覆っている場面なんて、生まれてはじめて見た。
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