蟲狩り少女
家の中にはお母さんがいるハズだ。


焦りで手に汗が滲み、グッと奥歯をかみしめる。


体調がよくなり、外出していればいい。


それか近くの病院にでも行ってくれていればいい。


そんな儚い願いが湧いては消えていく。


だけど、きっとお母さんは家の中にいる。


だって蟲は人間の心の隙間を求めて動くのだから。


きっと蟲たちはお母さんの心に入り込んでいる。


そしてこんなにも大量の蟲を、お母さんは引き寄せてしまっている。


その事実に胸がキュッと悲鳴をあげた。


それほどにまで、お母さんは追い詰められていたという事なんだ。


心に大きな穴をあけていたということなんだ。


なんで気が付かなかったんだろう。


ずっと一緒にいたのに。
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