蟲狩り少女
もう少し。


もう少しで思い出せそうだ。


そして……あたしは思い出した。


三岳友輝が脇マサヤを威嚇している光景を。


そして脇マサヤに言った言葉を。


『次の授業は移動教室だってよ』


「あ……!」


それを思い出した瞬間、思わず声をあげていた。


「どうした香野」


黒板に向いていた先生が振り返る。


「あ……いえ……えっと……。トイレに行っても……いいですか?」


咄嗟にそう言い、席を立つ。


「あぁ。行って来い」
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