光の少女Ⅰ【覚醒編】
「そいつはなぁ、幼い頃力を暴発させ、人を何人か殺しているんだよ」
「えっ!?」
一瞬何を言われたのかわからなかった。
「もう一度言おうか。そいつは殺人をした皇子様なんだよ。しかもその時に・・・」
「・・・めろ・・・」
「実の弟も殺したんだ。可哀想になぁ。まだ幼かったのに実の兄に殺され、王室からも存在を消されたんだからな」
「しかも当時、城にいてそのことを知っている者は解雇。王や王妃は事件自体を揉み消した。お陰で俺達が城に盗みにはいったことも揉み消されたってわけだ」
「そのことでは感謝してるんですよ。皇子様のお陰で俺達は取り締まられずにすんだんだからな。いっそのこと俺達が仕事の度にそのような事件を起こしてくれたら、全部揉み消してもらえるのに」
そう言い、盗賊達はゲラゲラと笑う。
その時、ふと夜天の雰囲気が変わった気がした。
「夜天くん!」
夜天の力が高まるのを感じ、花音は彼の名を呼ぶ。
だがその声は夜天に届いていないようで、盗賊達もまた夜天の異変には気付いていないようだった。
夜天の手が剣の柄にかかっても、盗賊達は気付かず笑っている。
「そうだ!皇子様、俺達の仲間にならないか?あんたが、邪魔な奴等を殺してくれれば俺らは手を汚さず、金目のものが手に入る。あんたの罪は王と王妃が揉み消してくれるだろ。うまくいけば」
「黙れ!」
盗賊の言葉を遮り、夜天が低い声で言う。
それと同時に夜天の掌から黒い霧のようなものが放たれ、盗賊達の動きを封じ込めた。