光の少女Ⅰ【覚醒編】
(結局、あんまり眠れなかった・・・)
夜天のことだけでなく、聖と密会のようなことをしていた火焔のことも気になってしまい眠れなかった花音は、少しでも眠気をさまそうと中庭に来ていた。
そこで先客がいるのに気付く。
「あれ?夜天くん?」
「・・・花音か」
「何処か行くの?」
夜天が片手に持っている花を見て聞くと、夜天は頷く。
「ああ。ちょうど今日なんだ」
「・・・私も一緒に行ってもいいかな?」
何が今日なのかはすぐに思い付いて花音が聞くと、夜天は少し考えてから頷いた。
「・・・ここだ」
飛竜に乗って三十分も経たないうちに着いたのは、眺めのいい丘だった。
そこに建っていた碑に夜天が近付き、花を置いて目を閉じる。
「これは?」
「・・・俺の暴走で犠牲になった人達の碑だ。・・・この下で眠っている奴は誰もいないけどな」
そこまで夜天は花音を振り返った。
「・・・悪かったな」
「えっ?」
「俺が無理に振り払ったから、足痛めたんだろ」
「だ、大丈夫だよ。このくらい」
「それに・・・」
言いながら夜天は顔を歪めた。
「恐い思いさせたよな。・・・あいつらに図星をつかれたからってまた暴走しそうになった。あの時みたいに。・・・人殺しって言われても仕方ないのにな。・・・恐かった、いや、恐いだろ?俺のこと」
「そんなことないよ!」
言いながら夜天が泣きそうに笑うのを見て、花音は咄嗟にそう言っていた。
「えっ!?」
「夜天くんは優しいよ。前に私が迷ってた時も気にかけてくれてたし、光輝のことだって・・・」
「でも・・・」
「それに夜天くんは忘れてないんでしょ。そして今も苦しんでる。・・・罪が消えることはないんだろうけど、夜天くんのことを人殺しだとは思わないよ。私にとっては、ううん、風夜達にとっても夜天くんは大切な仲間で友達、ただそれだけだよ」
「・・・お前も光輝と同じこと言うんだな」
「えっ?」
「光輝にも話した時、同じようなこと言われたんだ。・・・まぁ、その時はまだ全然割りきれてなかったから怒られもしたけどな。・・・さてと、そろそろ帰るか。朝食に遅れたら何か言われそうだからな」
「そうだね」
そう言うと、花音と夜天は再び飛竜に乗った。