光の少女Ⅰ【覚醒編】
「・・・花音」
花音に背を向けたまま、風夜が小さく声をかけてくる。
「・・・先に行け」
「えっ!?先にって・・・」
「あいつ、何だかやばそうだ。・・・聖や前に一度だけ見たことのある男よりも」
言いながら視線を向けた先で、女の笑みが深くなる。
「何をこそこそ話しているのかしら?・・・逃げようとしているなら、無駄よ」
言った女の周りの空間が歪む。
「・・・!!」
それに反応した風夜が風を結界のように展開させたところで、そこに激しい衝撃が加わった。
「・・・っ!!」
「ふふ、逃がさない」
女の放つ力を防ぐので精一杯らしい風夜とは違い、女は余裕のありそうな表情で
笑う。
「ちっ!」
「させるかっ!」
風夜に向けて手を翳した女に、夜天と雷牙が闇と雷の球を放つが、女はそれを簡単に止めてしまった。
「姉上」
それを見ていた花音に光輝が声をかけてくる。
「今のうちに・・・」
「ま、待って!光輝!」
彼に門の方へ引っ張られ、声を上げる。
「待ってよ!風夜達は・・・」
「姉上!」
拮抗状態で身動きのとれない風夜達を見て声を上げたが、強い口調で呼ばれて黙る。
光輝の表情は口調とは違い、どこか優しかった。