光の少女Ⅰ【覚醒編】
城を出発してから、約十分。竜が下降したのは、綺麗な湖の近くだった。


「綺麗・・・」

「でしょ?風兄様と私の秘密の場所なんだよ。空兄様や風兄様の親友である火焔様も知らないんだから」

「火焔?」

「隣国、火の国の皇子だよ。花音も近いうちに会うことになると思う」


聞き覚えのない名に花音が首を傾げていると、近くの岩に腰を下ろしていた風夜が答える。


「風兄様、向こうの方見てくるね」

「ああ、気をつけろよ」

「うん」


頷き、風華が走っていく。それを見ながら、花音は風夜とは別の岩に座った。


「ねえ」

「ん?」


静かに湖を見つめている風夜に、少し気になることがあって声を掛ける。


「風夜って、空夜さんと仲が悪いの?」

「そう見えるか?」


それに小さく頷くと、風夜は寂しげに笑った。


「幼かった頃は、そんなことなかったんだけどな。王位継承権のことで、兄上派と俺派に分かれていて、いつからか俺と兄上の仲も悪くなってた」

「そっか・・・」


花音にはそれしか返せなかった。

王位継承権のことは花音が口出しすることじゃない。風夜と空夜二人の問題であり、二人が解決しなくてはいけないものだった。
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