光の少女Ⅰ【覚醒編】

「花音ちゃん!」


暗い雰囲気になってしまったところで、風華の明るい声が聞こえてくる。


「向けてくるに綺麗なお花が咲いてたんだ。花音ちゃんも見に行こう」


ニコニコと笑いながら、風華が駆け寄ってくる。

それを見て花音が立ち上がった時、風夜が短く制止の声を上げた。


「待て」

「えっ?」


岩から立ち上がった風夜が腰に差した剣の柄に手を掛ける。

先程は笑みを浮かべていた風華も、今は笑みを引っ込め、辺りを警戒するように見回していた。

二人の雰囲気が変わり、空気が張りつめる。

その変化に戸惑いながら花音が視線を動かすと、何か黒いものが見えた。



「な、何?あれ」


視線の先にある黒いものを見て呟く。

元の世界で読んだ本に出てくる魔物と呼ばれる種族の方がどんなによかったか。

まだそれらは、ちゃんとした姿を持っていた。

だが、今目の前にいるのは実体がないようで、ただ妙な動きをしながら近付いてくる。

それが気味が悪かった。


「風華!花音は任せた!」

「うん!」


剣を引き抜いた風夜に頷き、風華が両手を前に出すと、そこに集まった風が花音と風華を守るように広がる。

すると、近付いてきていた黒いものは一人その外にいた風夜へと襲いかかった。


「あ・・・」


それに花音は小さく声を上げたが、不意に風夜の姿が消える。

よく見れば、彼は飛び上がって攻撃を避わしていた。

大きく跳躍した風夜の剣の周りを風が包む。


「はあ!」


風を纏わせた剣を風夜が叩き付けるように振り下ろす。

すると、それが当たった黒いものは四散して消え、同時に花音と風華を包んでいた風もなくなった。
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