光の少女Ⅰ【覚醒編】
また頭が痛みだす。

それでも、逃げてるだけではいけないのだ。

花音が大丈夫だともう一度頷くと、夜天は溜め息をついて話し始める。

夜天の話は簡単に纏めると、こうだった。

花音の弟であり、現在行方を眩ませている光輝が闇の国にいること。

両親のことは恨んでいるが、姉である花音には会いたがっていること。

それを聞いて、胸を締め付けられる。

彼はこの世界で一人で生きてきた。

その間、ずっと自分のことを覚えていて、再会を望んでくれている。

それに引き換え、自分は彼のことを忘れていたのだ。

彼のことだけではない。

この世界の住人であったことすら、数日前に知ったばかりだった。


「花音?」

「・・・大丈夫。何でもないよ」


顔を俯かせていた花音を心配そうに見てきた夜天に笑って返す。


「本当なら、俺が口出しすることじゃないかもしれないけど、話した方がいいかと思ったんだ。花音にあいつの気持ちも知ってほしかったから。でも、余計悩ませることになってたらごめん」


顔を曇らせた夜天に花音は首を振った。


「そんなことないよ。話してくれてありがとう。光輝もいい友達を持ってるみたいだね」

「俺は別に・・・」


夜天は照れたように視線を逸らせる。


「ふふ。・・・答えを出すのは明日だし、もう少し考えてみるね」

「ああ」


そう言って、花音は夜天の部屋を出た。

自室に戻ってきたところで、花音は頭の中を整理する。

自分が光の一族であり、この世界に必要とされていること。

湖で見た黒い陰。

水蓮から聞いた彼女達の決意。

王や両親の思い。

夜天から聞いた光輝の思い。

異世界に来て、風夜達と過ごした日々の思い出が甦る。

漸く

結論が出た。
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