光の少女Ⅰ【覚醒編】
「・・・父上達に聖のことは報告してきた」

「・・・うん」

「火焔達も明日、それぞれの国に帰るそうだ」

「そっか。・・・寂しくなっちゃうね」


花音がそう返すと、風夜が頷いて表情を真剣なものにした。


「花音、これが最後の選択だ」

「?」

「明日、火焔達が帰ると同時に全ての国境が封鎖される。そうすれば、他の国に行くだけでなく、国境の森への立ち入りも制限される」


花音は風夜が言おうとしていることがわからず、首を傾げる。

それに構わず、風夜は続けた。

「このまま、風の国に残るか、夜天について闇の国に行くかの二択だ」

「どういうこと?」

「夜天がお前の弟の居場所を知ってるらしい。それでお前が光輝に話をつけてくれれば、元の世界に帰ってもいいことになった」


風夜が言ったことに花音は顔を俯かせた。

帰ったところで、両親は温かく迎えてくれるとは思う。

だが、迎えに来てくれた両親に残ると言ったのは花音自身だ。

それに今帰るのは、ただ逃げているだけだ。

少しの沈黙の後、首を横に振ると風夜は目を細めた。

「・・・いいのか?本当にこれが最後のチャンスかもしれないんだぞ」

「いいよ。・・・辛くても今逃げたらいけないの。光輝に後のことを全部押し付けていったら、私、最低な姉になっちゃう」

「・・・わかった。なら、夜天にもそう伝えとくぞ」

「うん。光輝には、いつかちゃんと会いにいくからって言っておいて」

「ああ」


頷いて風夜が笑みを見せたのに、つられて笑みを浮かべる。


「・・・やっぱり、そうやって笑ってた方がいいよ。お前は」

「えっ?」


笑った花音を見て、背を向けた風夜が小さく呟く。

何て言ったのかよく聞き取れなかったが、風夜は出ていってしまった。
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