光の少女Ⅰ【覚醒編】
「酷い・・・」

「とにかく、傷の手当てを」


風夜がそう言い、誰かを呼んでこようと踵を返した時、兵士のか細い声が聞こえた。


「お待ち、ください」

「駄目だよ!まだ話さないで」

「私は、もう、助からない・・・。それより、ここは、危険です。陰の奴等が・・・、街の、外まで・・・」

「何だって!?」

「この国は、終わりだ。早く・・・逃げ・・・」


兵士の身体から力が抜ける。

ゆっくりと閉じられた目は、二度と開くことはなかった。


兵士を看取ってから花音と風夜は謁見の間に来ると、すでに事態を把握しているのか、王や空夜、風華、それに大臣や兵士達の空気は重い。


「奴等はあとどのくらいで此処に到達する?」

「詳しいことはわかりません。街の出入口に兵士を集めていますが、其処でどのくらい時間を稼げるか」

「そうか。だが、奴等は何故この国を?」

「私が」


空夜の言葉に花音が呟くと、風夜達の視線が集められるのがわかった。


「私が、此処にいたから」

「花音、何言って・・・」

「聖ちゃんが言ってた。自分達の計画に私は邪魔だって!だから」


そこまで言って、頬に痛みが走る。

頬を叩かれたのだと気付いて、花音は呆然と叩いた人物を見た。

「風・・・夜・・・?」


不機嫌そうに此方を睨み付けてくる風夜を花音が見つめていると、謁見の間の扉が開かれ、兵士が飛び込んできた。


「陛下!前線部隊が全滅、奴等がもうすぐ城に到達します」

「・・・そうか。・・・風夜」


重い溜め息をついた王が風夜を見る。


「何ですか、父上」

「お前は今すぐ花音を連れ、城を脱出しなさい」

「・・・・・・はい」


風夜が頷き、花音の腕を掴む。

そのまま謁見の間を出ようとするのを見て、花音は声を上げた。
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