光の少女Ⅰ【覚醒編】
「はぁ~」
光輝に散歩へ行くと伝え、外に出た花音は大きく溜め息をつく。
光輝に風夜と火焔の滞在を許してもらおうと説得しただけでものすごく疲れた気がした。
(風夜も火焔くんもいい人なのに、どうして敵視するのかな?)
そう思いながら、街を見て回る。
いつか、この街で暮らすことになるかもしれない。
そう思うと、やはり他の一族とも仲良くしてほしかった。
「光華様!?光華様じゃないですか!?」
「えっ!?」
その時、声が聞こえて花音は足を止める。
見ると、そこには優しそうな老夫婦がこちらを見て、近付いてきた。
「お久しぶりです、光華様」
「え、えっと・・・」
老夫婦にそう声を掛けられ、花音は戸惑う。
『光華』
その名前は知らないはずなのに、何故だか懐かしかった。
「あ、あの」
街で会った老夫婦の家へ連れてこられ、花音は戸惑いがちに口を開いた。
「貴方達は一体?それに光華っていうのは?」
その言葉に老夫婦は一度視線を交す。
「私どもは貴女様がご両親とこの世界を去ってから、光輝様の御世話をしていた者です」
「光輝の?」
「はい。一人此方に残されてしまった光輝様を育てて参りました。光輝様は、私どもにとって孫のような存在です。そして光華というのは、貴女が此方の世界を去る時に捨てられた此方での名です」
「私の・・・、もう一つの、ううん、本当の名・・・」
「とはいえ、貴女様にとっては馴染みのない名でしょう。今の御名前をうかがってもよろしいですか?」
「花音です。桐生花音」
「花音様ですね」
そう言い、優しく笑う老夫婦に花音は疑問に思っていたことを聞いてみることにした。