シンデレラに恋のカクテル・マジック
 タンデム・フレアでは二人で息を合わせることが大切だ。菜々は永輝の位置をよく見て、右手のボトルを回転をかけずに永輝にトスする。それを永輝が左手のティンで受け取った。次は永輝がトスしたボトルを菜々がティンで受けようとしたが、ボトルはティンの縁に当たって地面に落ちてしまった。

「ごめんなさいっ」

 菜々はあわててボトルを拾い上げた。

「いいよ。本番では落としても気にせずパフォーマンスを続けて」
「はい」

 そうしてほかにもさまざまな技の練習をした。集中していると時間が経つのが速く、気づいたときには公園の時計の針が一時を指していた。

「今日はこのくらいにしようか」

 永輝がベンチに置いていたタオルを取って額の汗を拭いた。

「はい。あの、じゃ、私、今からランチを作りますねっ」
「何を作ってくれるのかな」

 永輝の笑顔が眩しくて、菜々はドギマギしながらフェイスタオルを握りしめた。

「パスタはお好きですか?」
「ああ、大好きだよ」

 笑顔で言われて、菜々の胸がキュンとしてしまうが、あわてて自分で自分に言い聞かせる。

(私じゃなくてパスタが大好きってことだから!)
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