シンデレラに恋のカクテル・マジック
「そう思う?」

 永輝が菜々の顔を覗き込んできた。心の中まで見透かしてしまいそうなまっすぐな眼差しに、ますます胸が痛くなる。

(ほかに好きな人がいるのなら、そんなふうに見つめないで)

 菜々は苦しくなって彼から視線を外した。永輝とフレアの練習をするのが楽しくて、それだけに夢中になっている間に、彼に新しく想う相手ができてしまったことを考えるとやるせなかった。

「はい、きっと……」

 菜々は今にも消えそうな声で答えた。

「でも、実はあんまり自信がないんだ」
「どうしてですか?」

 菜々は顔を上げて永輝を見た。彼は菜々をじっと見ている。

「彼女に手を出さないって約束してしまったから」
「え?」

(手を出さないって……永輝さんが私以外にそう公言していたのは……お客様だ……)

 菜々は愕然としながらつぶやく。

「まさか……」
「そうだよ」

 永輝の返事を聞いて、鼻の奥がつんとして涙の予感がした。

「あのいつもキリッとした中村さんですか? 大人っぽくてステキでしたもんね」
「違う、彼女じゃない」
「じゃあ、高島さん? てっきり昨日断ったのだと……」
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