シンデレラに恋のカクテル・マジック
「そういうの、恋は盲目って言うんですよ」
「俺、視力は両方一・〇あるけどな」
「そういうことじゃなくて……」

 菜々が思わず苦笑すると、永輝が人差し指の先で菜々の唇に触れた。

「菜々ちゃんはかわいいよ。自信持っていい。それに、あれだけ俺と息ぴったりでタンデム・フレアができる子はほかにいない」

「そ、そう……」

 ですか、という言葉は、彼のキスに遮られた。ソファに押し倒された菜々は、彼の体の下で右手をバタバタさせる。

「も、もうすぐバイトに行かなきゃ……っ」

 永輝がチラリと壁の時計を見たが、口づけをやめない。

「え、永輝さんっ」

 熱いキスに溺れまいと、菜々が必死で理性を動員していると、ようやく永輝が唇を離した。

「じゃあ、今夜も来て。ずっと一緒にいたい。離れたくないんだ」

 熱い眼差しで見つめられ甘えるように言われて、菜々はこっくりとうなずく。

「私もずっと一緒にいたいです」

 菜々の言葉を聞いて永輝が嬉しそうに笑った。今まで見たことがないくらい、無邪気な笑顔だった。

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