シンデレラに恋のカクテル・マジック
「菜々ちゃんにお客さんみたいだ」
永輝にささやかれ、菜々は店内をキョロキョロと見回した。
(お客さん? 別に大学時代の友達も高校の同級生もいないみたいだけど……?)
菜々の様子を見て、永輝が心配そうに言う。
「カウンターの左端の男性。和倉(わくら)一臣(かずおみ)さんって名乗ってた」
菜々がそちらに視線を向けると、黒いスーツ姿の男性と目が合い、彼がすっと立ち上がった。三十代半ばくらいで身のこなしには気品があり、スーツも高級そうだ。あごが細くシャープな印象の顔立ちで、甘い顔立ちの永輝とは違うが、正統派のハンサムといった感じだ。
「斎城菜々様ですね?」
男性が穏やかな低い声で言った。
「は、はい、そうですが。あの……和倉様だとお伺いしましたが……?」
私の名前を知っているということは、どこかで会ったことがあるということだろうか。菜々は内心首をひねる。
(でも、こんなイケメン、一度見たら忘れないと思うけど……)
菜々がその男性の知的そうな顔をまじまじと見ていると、彼が「失礼しました」と言って、革製の名刺入れから名刺を一枚抜き出した。
「くずはグループ代表法人、株式会社くずはホールディングス取締役経理部長の和倉一臣と申します」
永輝にささやかれ、菜々は店内をキョロキョロと見回した。
(お客さん? 別に大学時代の友達も高校の同級生もいないみたいだけど……?)
菜々の様子を見て、永輝が心配そうに言う。
「カウンターの左端の男性。和倉(わくら)一臣(かずおみ)さんって名乗ってた」
菜々がそちらに視線を向けると、黒いスーツ姿の男性と目が合い、彼がすっと立ち上がった。三十代半ばくらいで身のこなしには気品があり、スーツも高級そうだ。あごが細くシャープな印象の顔立ちで、甘い顔立ちの永輝とは違うが、正統派のハンサムといった感じだ。
「斎城菜々様ですね?」
男性が穏やかな低い声で言った。
「は、はい、そうですが。あの……和倉様だとお伺いしましたが……?」
私の名前を知っているということは、どこかで会ったことがあるということだろうか。菜々は内心首をひねる。
(でも、こんなイケメン、一度見たら忘れないと思うけど……)
菜々がその男性の知的そうな顔をまじまじと見ていると、彼が「失礼しました」と言って、革製の名刺入れから名刺を一枚抜き出した。
「くずはグループ代表法人、株式会社くずはホールディングス取締役経理部長の和倉一臣と申します」