シンデレラに恋のカクテル・マジック
「そんなに心配しないでください。東京に着いたらメールしますから」
「メールじゃなくて電話がいい」

 菜々はベッドからぴょんと飛び降り、永輝の裸の背中に抱きついた。

「わかりました、電話します」

 本当は菜々も不安だった。孫とはいえ、娘を奪った男の血が半分流れている菜々を、祖父は本当はどう思っているのか。今際のときに呼び寄せようとするのだから、すべてを水に流そうとしてくれているのだと信じたい。

(やっぱり会わなくちゃ)

 菜々の声が届かない場所に祖父が行ってしまう前に。

 永輝の胸に回した菜々の手を、彼が軽く叩いた。

「それじゃキスできない」

 その直後、菜々は永輝に腕を強く引かれ、彼の胸に飛び込んでいた。

「一人で行かせるのは、本当に不安なんだ」
「大丈夫ですよ。しっかりやります。私だって大人です」
「俺は菜々ちゃんのご両親に見守るって約束したんだよ」
「そうでしたね。それじゃ、大阪で見守っていてください」
「仕方ないな」

 永輝が低い声で言って、菜々の唇にそっと口づけた。しっとりと触れ合った唇が離れるのが、いつになく切なかった。
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