シンデレラに恋のカクテル・マジック
「ああ、おはようございます、深森さん。わざわざお見送りですか」
「そうです。菜々ちゃんは俺の大切な人だから」
「菜々さんを大切に想うのはあなただけではありませんよ」

　一臣が目をすがめて永輝を見た。永輝も鋭い眼差しで見返す。二人の身長はほぼ同じで、険しい表情で向き合う二人の間で今にも火花が散りそうだ。

「あの、そろそろ行きましょうか」

　菜々がおずおずと口を開き、一臣が表情を緩めて菜々を見た。

「そうですね。では、深森さん、失礼します」

　一臣が促すように菜々の背中に手を回し、永輝が唇を真一文字に引き結んだ。その表情を見ると胸が締めつけられて、菜々は思わず永輝に駆け寄っていた。彼の腕につかまって背伸びをして、彼の耳にささやく。

「だ……大好き……」

　永輝が刹那、目を見開き、すぐに嬉しそうに細めた。

「言われなくてもわかってる」
「よ、よかった」

　そう言うと、菜々は彼の腕から手を離した。「じゃあね」と言って、改札前で待っている一臣に近づく。

「気をつけて」

　永輝の声がして、菜々が振り向くと、彼が手を振っていた。

「チケットです」

　一臣が菜々に切符を差し出した。
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