シンデレラに恋のカクテル・マジック
「あ、すみません」

 菜々は視線を一臣に戻し、切符を受け取って改札機の投入口に入れた。改札を通って名残惜しい気持ちで振り向くと、やっぱりまだ永輝が手を振っていた。

(本当はキスしたかったけど、あれで精一杯)

 戻ってきたら私からキスしてみよう。そんなことを思いながら、菜々は一臣とともに、ホームへと上がるエスカレーターに向かった。


 一臣が取ってくれたのはグリーン車の座席で、菜々は広い座席の窓側の方に遠慮がちに腰を下ろした。

 菜々一人なら自由席でよかったのだが、さすがに大企業の役職者ともなれば、自由席のドアの前の行列に並んだりはしないのだろう。

「あのぅ、交通費、おいくらですか?」

 菜々の心配そうな声を聞いて、一臣が穏やかに微笑んで言う。

「おじい様が孫娘を呼び寄せるのに、お金を要求すると思いますか?」
「えっと……」
「甘えてあげてください」

 そう言われても、生まれてから一度も会ったことのない祖父なので、やはり心苦しさを感じてしまう。

(生活水準とか金銭感覚とか、ぜんぜん違うんだろうな)

 そう思って、一臣に問いかける。
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