シンデレラに恋のカクテル・マジック
「それは深森さんとのことを言ってるんですか?」

 菜々の頬が朱に染まったのを見て、一臣が困ったように続ける。

「それはまずいですね」
「まずい?」

 菜々は怪訝に思って彼を見た。

「はい。おじい様が考える幸せの形とは少し違いますから」
「それってどういうことですか?」

 菜々の問いかけに一臣が答える。

「娘さんに苦労させてしまった分、菜々さんにはしかるべき地位にあるしかるべき相手との結婚を望んでいると思います」
「しかるべき……?」
「はい、たとえば僕とか」

 一臣の言葉があまりに突拍子がなく、菜々は思わず表情を崩した。

「いくらなんでもそれはないでしょう。おじい様だって初めて会う孫娘と、大切な部下とをくっつけようだなんて思わないんじゃないですか? それに、私には永輝さんという恋人がいますから」

 一臣も同じように笑みを浮かべる。

「知っています。でも、おじい様にはしばらく言わない方がいいでしょうね」
「どうしてですか?」
「社長は――菜々さんの前でこのようなことを言うのは恐縮なのですが――どちらかというと古い考え方の人ですから。恋人がバーテンダーというのはいい顔をしないと思います」
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