シンデレラに恋のカクテル・マジック
「佐百合はあんな死に方をして、さぞつらかったろうな。佐百合の分までおまえを幸せにしてやりたい」
「ありがとうございます。両親が死んだときはとてもつらくて悲しかったですが、今は幸せです」

　良介が菜々の全身をチラリと見て言った。

「本当にそうか？　着古した服に安物のバッグ。とても幸せとは思えんが」

　祖父に言われて菜々の顔が熱くなった。確かに服もバッグもできるだけ長く大切に使っているが、それは安物買いの銭失いにならないよう、買い物をするときに吟味して相応のものを購入したからだ。今日だって、手持ちの服の中では一番きちんとして見えるネイビーのスカートに白のブラウス、そしてライトブルーのジャケットを合わせてきたのだが、良介の目には不合格らしい。

（私は別にブランドものの服とか高価なバッグを持つことにこだわりはないし……そういうのが買えるのが幸せだとは思わないけど……）

　でも、その正直な気持ちを伝えるのは、会ったばかりなので慎むことにした。

「うちで一緒に昼食をとろう。一流のシェフを雇っているからな。和倉くん、それまでに菜々を変身させてやってくれ」
「変身？」

　菜々は首を傾げた。
< 193 / 278 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop