シンデレラに恋のカクテル・マジック
「その格好は葛葉家にふさわしくない」

 祖父の言葉に菜々は色を失った。

(ふ、ふわさしくないって!)

 想像していたより祖父が元気そうなのは喜ばしいことだが、祖父は考えていた以上に考え方が凝り固まっているようだ。

 菜々の様子を気にすることなく、良介は一臣に言う。

「和倉くん、店員には後で私に請求するよう秘書に連絡を入れさせるから」
「承知いたしました」
「菜々は気にせず好きなものを選ぶように」

 良介が菜々に保護者然とした一瞥をくれた。それに困惑と反感を覚えながらも、ペースメーカーの植え込み手術を終えたばかりなんだから従おう、と菜々は考え直して礼を言う。

「ありがとうございます」
「それでは、菜々さん、行きましょう」

 一臣が言葉で菜々を促した。

「では、社長、後ほど」

 そうして良介に一礼する。

「うむ。頼んだぞ」

 良介は座ったまま菜々と一臣を見送った。書斎から出た菜々は一臣を見上げる。

「祖父は思ったより元気そうでしたね」
「そうですね、菜々さんに会えると思ったら元気が出たのではないでしょうか」

 一臣がさらりと言った。
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