シンデレラに恋のカクテル・マジック
「わかりました……」
「本当は菜々さんの顔を見ながら〝いってきます〟と言いたいところなのですが……」

 一臣が残念そうに言った。

「すみません」
「仕方ありませんね。それでは今夜会えるのを楽しみにしています。失礼します」

 直後、廊下を遠ざかる足音が聞こえて、菜々はふうっと息を吐きだした。知らないうちに肩に力が入っていたのか、肩が凝っている。

(私、どうしたらいいんだろう……)

 永輝への想いを断ち切れていないのに、一臣のプロポーズにイエスの返事をしてはいけないと思う。

(でも、ノーなんて返事ができるんだろうか……)

 祖父を味方につけて周囲を固められているのに? 

(こんなときは誰に相談したらいいんだろう……。遠藤さんには予備校に行かなくちゃ会えないし……。お母さんが生きてたらなぁ……)

 寂しい気持ちでため息をついたとき、ふと思いついた。

(そうだ! 叔母さん……柳井由香里さんを捜してみよう!)

 同じ女性で、母の妹だ。会ってみたい、という気持ちが強く湧き上がってきた。

 菜々は携帯電話でインターネットに接続し、検索サイトで〝柳井由香里〟と打ち込んでみた。
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