シンデレラに恋のカクテル・マジック
(思った通り!)
大手企業の取締役だけあって、企業のウェブサイトの役員一覧のページがヒットした。くずはグループ傘下の株式会社ヤナイ・コーポレーションの取締役に、柳井由香里の名前があったのだ。会社の住所は東京都港区六本木にある複合オフィスビルの二十階になっている。
(同じ東京だ!)
居ても立ってもいられなくなり、クラッチバッグを引っつかんで部屋を飛び出した。廊下を急ぎ足で進んだが、ダイニングの横を通ったところで、吉村に声をかけられる。
「菜々様、お出かけですか?」
まるで監視されているかのようなタイミングだ。悪いことをしているわけではないのにギクリとしてしまう。
「は、はい。ちょっと東京観光に……」
「でしたら、運転手に言って車を出させましょう」
吉村の言葉に、菜々はあわてて両手を振る。
「いいえ、歩きたい気分なので大丈夫です、結構です」
「道はわかりますか?」
「はい。地図アプリを使いますから」
「そうですか」
淡々と言う吉村に、菜々は控え目に話しかける。
「それで……おじい様には夕方には戻ります、と伝えてもらえますか……?」
「夕方ですか?」
大手企業の取締役だけあって、企業のウェブサイトの役員一覧のページがヒットした。くずはグループ傘下の株式会社ヤナイ・コーポレーションの取締役に、柳井由香里の名前があったのだ。会社の住所は東京都港区六本木にある複合オフィスビルの二十階になっている。
(同じ東京だ!)
居ても立ってもいられなくなり、クラッチバッグを引っつかんで部屋を飛び出した。廊下を急ぎ足で進んだが、ダイニングの横を通ったところで、吉村に声をかけられる。
「菜々様、お出かけですか?」
まるで監視されているかのようなタイミングだ。悪いことをしているわけではないのにギクリとしてしまう。
「は、はい。ちょっと東京観光に……」
「でしたら、運転手に言って車を出させましょう」
吉村の言葉に、菜々はあわてて両手を振る。
「いいえ、歩きたい気分なので大丈夫です、結構です」
「道はわかりますか?」
「はい。地図アプリを使いますから」
「そうですか」
淡々と言う吉村に、菜々は控え目に話しかける。
「それで……おじい様には夕方には戻ります、と伝えてもらえますか……?」
「夕方ですか?」